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遅筆堂文庫展 [お友だちとのこと、とか]

昨日、九段下の【NIKIギャラリー册】で開かれている「遅筆堂文庫展」に行ってきました。


【遅筆堂文庫】とは、作家・井上ひさしさんが自らの蔵書7万冊(1987年開設当初)を、
故郷の山形県川西町に寄贈して作られた図書館。
蔵書は、今もなお井上さんから送られ続け、現在では14万冊に及んでいるそうです。
今回は、その中から貴重な蔵書、資料、創作メモなど約500点を東京に運んで、
3週間に渡って展示しています。(2/26まで)

  

遅筆堂とは、ご存知の方はご存知の、「いつも原稿が遅くて編集者泣かせ」
という井上ひさしさんの雅号のようなもので、
愛用の原稿用紙には「遅筆堂用箋」と書かれています。
図書館も、井上さんご自身で「遅筆堂文庫」と名付けられたとのことです。

もっとも、「筆が遅い」のは、一つの作品を書き上げるために、
関連書籍、資料を徹底的に読み込んでいるからにほかなりません。
上の写真のように、付箋だらけの蔵書が、たくさん収められているのです。




昨日は、友人でもあり、この「遅筆堂文庫」設立の立役者でもある
遠藤征広氏が、「遅筆堂文庫ができるまでとできてから」というテーマで、
トークショーを行うというので、行ってきたのです。

ま、井上ひさしさんのご講演ならともかく、遠藤氏の話は友人が盛りたててやらねば、
そんな思いの友人、知人が大勢いらしてました。

彼との最初の出会いは、今から7~8年ほど前、
当時、私が活動していた【仙台文の會】では、遅筆堂文庫との交流が始まっていました。
設立に尽力を果たした遠藤氏のことは噂には聞いていたのですが、
初めて会ったのは、仙台で行われた「井上ひさし文章講座」でのこと。
純朴な農村青年、といった印象でした。
件の「文章講座」では、「私」というテーマの作文を書き、みんなの前で読み上げます。
その時、彼が山形訛りで読んだ「私」はというと
「実は私は腹黒い人間だ・・・」といった内容だったのです。

年齢不詳の純朴青年の見た目に、すっかり騙されるところでした、私。

で、休憩時間にその遠藤氏と話をする機会があり、これといった話題もないので、
「遠藤さんって、腹黒いんですか?」と。

これが、初めての会話でした。
いきなり初対面で「腹黒いんですか?」なんて聞いてくる「変な女」と思ったそうです。
当然ですけど・・・・

それ以来の友人です。

アップには耐えられないので、ややボカシ気味で・・・
若作りにしてますが、ヒツジ年生まれの「大台」、私よりはずっと年上です。

一応、彼の名誉のために付け加えておきますが、
作文で「私は腹黒い」と書いたのは、あくまでも「ウケ狙い」だった、とのこと。
ま、「がんばり屋」で、まわりの信頼を集める人です。

肝心のトークの内容はといいますと・・・・

彼は、20代前半の約4年間を、難病のお母さんの付き添いで、
東北大付属病院で過ごしていました。
多感な年頃に、女性4人部屋で過ごすのはとても大変なこと。
他の患者さんや看護婦さんたちと問題を起こしたら母親が病院にいられなくなる、
と一切目を合わせないようにし、
ひたすら故郷の作家・井上ひさしさんの本を読み漁っていたのだとか。
そのうちに、川西町で直木賞作家井上ひさしの講演会を開きたい、という気持ちが高まり、
地元有志たちの協力で、2~3年掛かりで実現させたのでした。
こうして、井上ひさしさんと遠藤氏ら地元の若者との交流が始まり、
蔵書を寄贈する、ということになったそうです。

当時の井上さんの市川のご自宅では、至る所に本が山積みされていて、
下のほうに積まれた本は、すぐに取り出すことができず、必要な時には買いなおしてしまう、
という状態だったとか。
これを、約5ヶ月かけ、11トントラックで市川~山形間を4往復して運んだそうです。
山積みされていた本は、司書の手によって系統立てて整理され、
井上さんが必要な本は、すぐに探してご自宅に送ることができるようになりました。
もちろん、地元の人たちは、寄贈された本を手にとって読むことができます。
こうして、本が生かされている、という話です。


≪オマケ≫

関連する話は、井上ひさしさんの『本の運命』にも書かれています。本の運命

本の運命

  • 作者: 井上 ひさし
  • 出版社/メーカー: 文芸春秋
  • 発売日: 2000/07
  • メディア: 文庫

有名な『吉里吉里人』の吉里吉里国入国手形


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コメント 9

柴犬陸

「腹黒いんですか?」と聞いた、柴壱さんの度胸にnice!
遠藤さんのことは、全く知りませんでした。
井上さんとのご縁、面白く読ませていただきました。
by 柴犬陸 (2006-02-21 00:58) 

取り組むには楽しい活動ですね~。「なければ、作る!」柴壱さんのエネルギー溢れるお友達・・・素敵です!
こういう話、大好きです~~! 
by (2006-02-21 07:42) 

柴壱

♪kissちゃま♪
nice! ありがとう~~~~~★
by 柴壱 (2006-02-22 09:44) 

柴壱

♪柴犬陸さま♪
nice! ありがとうございます~★
遠藤氏は『遅筆堂文庫物語』という本も出していて、芝居のことも書いてます。
図書館にあると思います。半日で読める本なので、興味がありましたら、どうぞ。
「腹黒いんですか?」がきっかけで、彼らの活動を手伝わせてもらっている、
というわけです。
by 柴壱 (2006-02-22 10:18) 

柴壱

♪こぎん様♪
nice! ありがとうございます~★
田んぼの真ん中に、図書館&劇場がひとつできたお陰で、近くにスーパーができ、ドラッグストアができ・・・住宅地になり、街ができました。
都心に暮していると想像もつかないような「元若者」たちのパワーです。
by 柴壱 (2006-02-22 10:28) 

As Times Goes By

遠藤さん、元気そうですね。みなさん、これからもフレンドリープラザと遅筆堂文庫をよろしくごひいきに。
by As Times Goes By (2006-02-26 00:21) 

柴壱

♪As Time 燕多さま♪
ご訪問ありがとうございます~★
遠藤さん、元気そうでした。私も久しぶりだったのですけど。
遅筆堂文庫、フレンドリープラザ、そして川西町の益々の発展をお祈りしてます。
あっ、3/21は伺えなくて、申し訳ないです・・・・。
by 柴壱 (2006-02-26 11:48) 

遠藤征広

腹黒遠藤ですが、今回の「兄おとうと」はどんなに努力しても売れませんね。祝日のヒル公演は地方ではダメですね。痛感しました。
さて、明日は盛岡公演。普段なら、今日から盛岡入りなんでしょうが、明日早朝に入ります。「はやて」は盛岡を近くしました。2時間20分で盛岡に行けるんですから・・・・明日500席の盛岡劇場に何人のお客様がお出でになるか・・・・400人は来てほしいです。
by 遠藤征広 (2006-03-13 17:19) 

柴壱

♪おやおや、この記事の主役の遠藤さま~♪
見つかってしまいましたか・・・・ようこそです! 
祝日といえども、火曜日の川西には伺えません <m(__)m>
昨日、市川公演のチケット押さえたところです。すみませんねぇ・・・
今夜は、作造の地元・古川なのでは?
by 柴壱 (2006-03-13 18:22) 

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