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黄金週間の文化的な過ごし方・恥ずかしながら…紙屋町 [観道楽の感動・楽]

黄金週間後半の5/4は、こまつ座「紙屋町さくらホテル」(井上ひさし作、鵜山仁演出)
観てきました。

  

俳優座劇場のほぼ裏手あたりに、例の東京ミッドタウンがあるのですが、
この劇場の周りだけが、なぜか、ふっと空気が変わったような感じがしました。

前の記事にも書いたとおり、この日で7回目の観劇となりました。
7回といっても、毎回キャストの一部が変わったり、劇場が違ったりするので
同じパターンは1度もありません。
もっとも、最初の2回は新国立劇場のプロデュースでしたから、キャストさんも演出も全く違うので
別物と数えた方がいいのかもしれませんが。

7回も観ているというと、よほど素晴らしい作品なのだと思いますよね。

キャストは、皆さん、舞台を中心に活躍する実力派揃いではありますが、
映像の世界で華やかな役を演ずる方たちではありません。
それに、陸軍・海軍、さらには築地小劇場、移動演劇隊といった、戦後世代には馴染みのない話です。
これまで、人には勧めにくい作品だと思っていました。とりわけ、普段芝居を観ない人には。
そう感じること自体、何回も観ているわりには、私自身が惚れ込んでいなかったのかも知れませんね。

が、今回6回目、7回目と観て、自信を持って皆さんにお勧めすべき作品だと確信しました。
何度も観ているのに、今頃気づくなんて、かなりの「ボケタレ」だって? 恥ずかしながら…
(「ボケタレ」は広島弁のバカ者。芝居の中で出てきます。「バカ」や「アホ」よりユルくていい感じでしょ?)
でも、すっかり惚れ込みましたよ。

芝居の中で、丸山定夫(実在した新劇スター)のセリフに
「どんな芝居でも、今日初めて芝居を見る人がいる。その人のことを思って演じる」
というのがありました。(正確なセリフまわしは違うかもしれませんが)

井上ひさしさんが、よく講演会で話しています。
 客席に必ず一人は、今日初めて芝居というものを観るお客さんがいるはずです。
 そして、その人には、劇場に足を運ぶに当たってのドラマが必ずあるはずです。
 今日の芝居によって、その人の人生を変えてしまうかもしれません。
 だから、いい加減なものを上演してはいけないのです‥‥と。

この「紙屋町」なら、全く初めて芝居を観る人も、何かひとつは心に刻んで帰ることでしょう。
それは、笑いでも、涙でも…
考えてみれば、一つの芝居の中で戦争のことから、芝居の裏方の面白さ、言語学まで
盛りだくさんなことを自分自身の肥やしとして吸収できる、贅沢な作品ですよ。
むずかしいテーマですが、ゆかいに、ふかく、まじめに描かれています。

7回目だというのに、またしても中盤の笑わせどころでは、大笑いしてしまいました。
ご覧になったことのある柴犬陸さんとチヨロギさんは、おわかりでしょう。
この日は、千秋楽前日でしたが、盛大なカーテンコールに、2度応えてくれました。
客席も、一様に満足げなように思えました。

さらに再々々演があるかどうかはわからないけど、あればまた行って大笑いしてきますよ、きっと。
今度は、できればお友だちをいっぱい誘って、ね。
丸山定夫や園井恵子を知らない戦後世代、いえ山口百恵の現役時代を知らないような若い世代にも
ぜひお勧めしたいです。

客席には、渡辺徹さんの姿がありました。
最近リバウンドに苦しんでいる、とテレビで言ってましたが、思ったより太ってませんでしたよ。
徹さんは今でも文学座の役者さんです。
「紙屋町」には文学座所属の栗田桃子さん、大原康彦さんが出演されているので
そんな繋がりかもしれませんね。
栗田さんは、蟹江敬三さんのお嬢さんだそうですが、とてもステキな舞台女優さんなので
今後も注目していきたい一人です。

そうそう、こまつ座は数え切れないほど観ておりますが、今回初めて、劇場で配られる折込チラシが
クリアファイルに入っていました。こういうサービスはうれしいものです。
ブルテと行く時は、いつも1部しかもらわないけれど、もう1部もらえばよかったかな
なんて、ちょっとセコイことまで考えてしまいました(笑)

その折込チラシの中には、次回作「ロマンス」のチラシが。
大竹しのぶ、松たか子、段田安則、生瀬勝久、井上芳雄、木場勝己の豪華キャストですよ。
東京公演のみですが、8~9月のロングラン公演となります。
初めてお芝居を観る、という方にも、これならお勧めできるかしら。 



日付は遡りますが、黄金週間の初日4/28(土)にも紀伊國屋サザンシアターで
芝居を観てきました。
クラクラ・プロデュース「恥ずかしながら グッドバイ」(中島淳彦脚本・演出)



こちらは、文学座の看板俳優・角野さん、東京ヴォードヴィルの看板俳優・B作さん、
そして、こまつ座の元看板俳優(?)すまけいさん。
紀伊國屋でポスター見ただけで「わっ、面白そう!!」ということで
チケットをゲットしたものです。

舞台は昭和50年のフィリピンのとある島。
グアム島で横井さん、ルバング島で小野田さんが発見され、第三の日本兵がいるらしいと
調査に来た外務役人(角野さん)。実は、調査は口実で、捨てられた不倫相手に会いにきた、という。
追いかけてきたのは悪友でもある厚生役人(B作さん)、そして妻までが乗り込んでくる、
というドタバタ劇。元日本兵(すまさん)は発見されるが‥‥

ブルテいわく、「紙屋町」とはずいぶん違うよね。
たしかに…ね。作家は私と同世代の方。
もちろん戦争は知らないし、横井さん、小野田さんが発見された頃は、まだ子どもだったはず。
井上作品とは重さが違うのは仕方がないさ。

でも、これだって、テーマは「戦争の傷跡」だし、日系フィリピン人のアイデンティティの問題や
役人の公費無駄遣いの話にまで触れられてます。
ドタバタに大笑いして、ちょっとだけマジメに考えさせられて、これはこれで楽しめました。
役者さんが派手なわりに、メディアなどでほとんど取り上げられないのが、ちょっと意外な感じでした。
もっとも、同じ時期に興味深い芝居をあちこちでやっていたからね。
三谷作品とか、シスの「写楽考」とか。



それにしても、角野さん、仕事しすぎ。
今年は「渡鬼」がないから、舞台イヤーなのかしら。
いえいえ、去年だって「渡鬼」があったのに、舞台も2本観ましたよ。
合間には2時間ドラマでも、ちょくちょく顔見るし。
今年は、夏から冬にかけてこまつ座「円生と志ん生」の旅公演が。
これも、初めてお芝居観る方にもお勧めしたい作品でしたわ。


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コメント 7

柴犬陸

こまつ座の次回作、すごいキャスティングですね。
これまでのような、こまつ座システムでチケットが取れるんですか?
って、これはこまつ座に聞くことでしたね。
新作というところが、またまたスリリングです。

『紙屋町。。』については、また観る機会があればぜひに、と思います。
ストーリーを知ってから観ると、またその深さが分かる内容ですね。
とにかくラストの唐突さが忘れられません。
by 柴犬陸 (2007-05-09 00:37) 

チヨロギ

「紙屋町」、じつは戯曲集もAmazonで注文してしまいました。
今回は姉と母と行ったのですが、全員大満足!
母などは灰田勝彦の歌やB-29の音さえ懐かしんでいました。
(言語学者ではありませんが、経験上、ちゃんと聞き分けられるそうです)
再々々演されることがあったら、ぜひまた観に行きたい作品です。
もちろん「ロマンス」も、運良くチケットがとれたら観に行きたいと思っております^^♪
by チヨロギ (2007-05-09 01:13) 

Cocona

お芝居一度行きたいです
むかし、数回いったきり。感動が忘れられません。
紙屋町も観てみたいし、新しい「ロマンス」は豪華ですね。チケット取ってみたいです!
by Cocona (2007-05-10 23:05) 

柴壱

♪柴犬陸さま♪
nice! ありがとうございます~☆
この「紙屋町」は噛めば噛むほど…ではありませんが、見れば見るほど
味わい深くなる芝居です。キャストさんたちも、回を重ねるごとに
よくなっているように感じます。主役は交代しましたが、去年の夏より
グッとよくなったように思えました。俳優座劇場のせいかしら。
「ロマンス」のDMは届いてますよね?
チケット争奪戦は大変そうです。また3回くらい乗り込もうと思っているのですが…。
by 柴壱 (2007-05-11 02:28) 

柴壱

♪チヨロギさま♪
nice! ありがとうございます~☆
「蔵之介さんはお好きですか?」のひと言から、柴壱的趣味の世界に
引きずり込んでしまったようで…でもウレシイです。
お母様とお姉さまも楽しまれたようで、よかったですね。
たしかに、実際に戦争を体験した世代の方には、ああいうお芝居には
感じるところがいろいろあるでしょうね。
「ロマンス」はまたちょっと毛色の違う話のようですが…
(おっと、洒落じゃないけど、井上作品でいわゆる「赤毛もの」というのは初めてか)
これもまた楽しみですね。
by 柴壱 (2007-05-11 02:48) 

柴壱

♪てくてく様♪
nice! ありがとうございます~☆
by 柴壱 (2007-05-11 02:50) 

柴壱

♪Coconaさま♪
nice! ありがとうございます~☆
大画面で見る映画の迫力も魅力的ですが、
客席の自分たちのために毎回演じてくれる舞台も、また魅力的です。
チケットを取るのが億劫だったりすると、なかなか踏み込めない世界ですけどね。
舞台の大竹しのぶさんは、ステキですよ。
by 柴壱 (2007-05-11 03:01) 

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