SSブログ

芝居・ぬ?な日曜日~太宰治を2倍楽しむ『人間合格』 [観道楽の感動・楽]

日曜日(2/10)、紀伊國屋サザンシアターで初日を迎えたこまつ座『人間合格』を観てきました。
                                   (井上ひさし 作 / 鵜山仁 演出)
  
そう言えば、こまつ座でも東京で迎える初日を観にいくのは初めてのような。
山形から初日が始まる時には何度か足を運んでますが。
かつて、新作の初日を取っていたら、初日が延期になった、という経験があったもので‥‥。

  
日曜日の初日、ということで変則的に3時開演。(通常は昼の部1時半、夜の部6時半)
途中休憩15分を含めて3時間5分の公演。5年前に観た時は、3時間20分近かったような気が。
転換が早くなったのだろうか‥‥テンポアップするのはいいことですわ。

初日なので、ロビー花も生き生き!
  
と、カメラを構えていたら、紺の法被のオジサン(つまりスタッフさん)に
「お客さん、困ります。写真、撮らないでください。。。」と。

「えっ、ダメなんですかぁ? 宣伝させてもらおうと思ったのにぃ~」
「それなら、撮っていいから、ぜひ宣伝してください!!」

実は、今回ご縁あって、公演プログラム「the座」の仕事を少し手伝わせてもらいまして
声をかけてきたのは、顔見知りのスタッフさん。
写真を撮っていた柴壱はからかわれただけなのでした。
もちろん、客席内の撮影はNGだけど、ロビーなら撮影OKとのこと。
ホントは、開演前に舞台に下がっている幕もステキなので、撮りたかったくらいなんですけど。

『人間失格』ではなく『人間合格』。『…失格』を書いた太宰治の評伝劇です。

舞台は『人間失格』の冒頭になぞらえて、
 「私は、その男の写真を六葉、見たことがある」
というフレーズとともに、これから登場する津島修治(=太宰治)を象徴する6枚の写真について
6人の登場人物がそれぞれ独白の形で語っていく、というプロローグから始まります。
そして、場面変わっていきなり
 「これでいいのか~」
二人の男たちのシュプレヒコールのような声が。
 「物価は上がる」
 「給料は下がる」
 「ブルジョアの屋敷は広い」
 「プロレタリアの長屋は狭い~」
 「地主は何人もの妾を囲い」
 「百姓は何人もの娘を売りに出す~」
 「これでいいのか~」
と。これは一体いつの時代の話?と一瞬錯覚を覚えます。
まるで現在の格差社会への不満をぶちまけているかのよう。
現代なら
 「金持ちは六本木ヒルズで夜景に包まれて眠り~」
 「貧乏人は川原でブルーシートに包まれて眠る~」
とでも言うのかしら。
時代は昭和の初期。まだ言いたいことが自由に言えなかった頃のお話。
津軽から上京し、二人の活動家の学生と出会い、生涯の友となった太宰治の
青春と友情の物語なのです。

太宰治と言えば、その美貌と才能ゆえに苦悩し、女性に溺れて
いつも死と向き合っていた人、といった印象。
その容貌に魅せられてか、作風に惹かれてか
多くの文学少女たちが夢中になる作家さんの一人です。
(柴壱は、学校で習う以外はほとんど読んでいません。
 中高生時代から夢中になって読み漁っていたのは井上ひさしですから・・・これホント!)

でも『…合格』に登場するのは、自殺未遂を繰り返した暗いばかりの太宰ではありません。
10年前に渡辺いっけいさんが太宰役を演じたときに一緒に観た元文学少女の知人は
「こんな太宰は、私の好きな太宰じゃない!」と
衝撃を受けたほど。

太宰治の名著のエッセンスが数多くちりばめられた中、物語は明るいトーンで進んで行きます。
「これでいいのか~」の掛け合いに始まるような、言葉遊びがふんだんに登場。
井上さんならではのお下品な例え話や、赤く染まった(つまり戦前の危険思想)表現も
大いに笑えます。
そして、最後にちょっとホロリと。

今回、太宰役を元男闘呼組の岡本健一君が演じています。
(過去には風間杜夫さん、渡辺いっけいさん、大高洋夫さんが)
そして、生涯の友2人は、TVでもお馴染みの山西惇さん、甲本雅裕さん。

公演プログラム「the座」に掲載された岡本君のプロフ写真を見てビックリ。
まるで太宰治が乗り移っているかのようなのです。
TVでクールな役ばかり見てきた岡本君は、いわゆる太宰治のイメージにピッタリ。
で、逆に『…合格』に登場する太宰像としてはどうなの?
って、実はあまり期待もしていなかったのですが、
酔って踊っておどける姿も、津軽弁も、何か妙に愛らしいのですわ。
そして、親友2人とのアンサンブル息もピッタリ。
過去、渡辺いっけい版1回、大高洋夫版で2回観てますけど、
3人組(太宰&親友2人=岡本、山西、甲本)のアンサンブルの良さでは、
イチバンという感じでした。

柴壱さん、岡本健一君に、すっかり魅せられてしまいました。

これを機に、実家に積んであった太宰治の文庫本数冊を持ち持ち帰って、読んでみようかな、
な~んて思ったりもして。
おっと、長くなりました。あまり長すぎては、逆効果。
「宣伝失格」ですな。
他にも書きたいこといっぱいあるけど、また別の機会に。


nice!(6)  コメント(11)  トラックバック(1) 
共通テーマ:演劇

nice! 6

コメント 11

明日観に行くので、ますます楽しみになりました。
by (2008-02-15 06:44) 

チヨロギ

さっそくのレビュー、ありがとうございます!
私も柴壱さん同様、太宰にハマった経験はありません。
どちらかというと翻訳モノのほうが好きだったので。
この作品では、かなり人間くさい太宰像が描かれているのですね。
岡本健一くんがおどける姿って、あまり想像できないのですが、
柴壱さんの記事を読んでいたらワクワクしてきましたよ~♪
まだひと月ほど先になりますが、楽しんできたいと思います ^^
by チヨロギ (2008-02-16 03:31) 

Cocona

生岡本健一が見られる、という不純な動機で14日に行ってきましたよ!!
白い着物の写真は一瞬太宰かしら、なんて思いました
by Cocona (2008-02-16 22:27) 

ブログで宣伝してますから、ロビーはOKでしょう。(^-^)
あ、知っててからかわれただけだったのですね〜。(おちゃめ(笑)。
面白そうなお芝居ですね!!
「物価は上がる」「給料は下がる」
まさに現代の縮図。ズバッ!! っと切り崩して下さいね〜!!(爆。
by (2008-02-17 00:53) 

柴犬陸

とうとう始まりましたね。
毎度のことですが、芝居の予定を入れると1年があっという間に過ぎます。
ロビーでの撮影、パルコ劇場はたいがいNOですね。
他ではそんなことがないのに、といつも思います。
3時間5分の上演だったんですね。
私が5年前に観劇したとき、白井晃さんが見えていたのを思い出しました。
by 柴犬陸 (2008-02-17 01:29) 

柴壱

♪hamuさま♪
ご訪問ありがとうございます~☆
もう、ご覧になりましたね? いかがでしたか?
by 柴壱 (2008-02-17 21:19) 

柴壱

♪チヨロギさま♪
nice! ありがとうございます~☆
初日を見た井上さんが、岡本君はもちろんのこと、とにかく3人組がよかった、
と絶賛だったそうです。
3人のキャラというか、力量の粒が揃っているからかな、と勝手に思っています。
岡本さんだけでなく、甲本さん、山西さんもぜひお楽しみに。
まだ1ヶ月も先ですね・・・・
by 柴壱 (2008-02-17 22:03) 

柴壱

♪Coconaさま♪
nice! ありがとうございます~☆
バレンタインナイトのご観劇でしたか。
「君は何もしなくても太宰に似ているから大丈夫」と、井上さんが岡本君に
言ったそうです。(2/2付朝日の夕刊より)
白い着物の療養中の写真も、本物そっくりでしたよねぇ。
ところで、公演プログラム「the座」は買われましたか?
by 柴壱 (2008-02-17 22:07) 

柴壱

♪saraさま♪
nice! ありがとうございます~☆
初演は18年前ですから、バブルのまっ最中。
「物価は上がる」「給料は下がる」なんてセリフには無縁だった頃です。
5年前でさえ、今ほどピンと来なかったセリフですよ。
3/16までやってますので、saraさん、もし上京の予定などありましたら
ご覧になって帰りませんか~?
と、宣伝のダメ押しをさせていただきました(^^ゞ
by 柴壱 (2008-02-17 22:24) 

柴壱

♪柴犬陸さま♪
nice! ありがとうございます~☆
そうそう、パルコ劇場はロビーの撮影も禁止になっていましたね。
何故なのでしょう・・・
こまつ座は、あれがダメ、これがダメ、というのを明言しない劇団です。
後払い料金の振込み期限も決まっていないくらいですから。
で、過去、上演中にカメラのフラッシュが焚かれてしまったこともあったのですよ。
大人の常識の通用しない人が増えてくるから、ダメ、ダメばかりになってしまうのでしょう。
今回の『合格』はかなりテンポがいいですよ。
5年前にソワレを観た時、まっすぐ帰ったのに家に着いたのが11時半近かったですから・・・
by 柴壱 (2008-02-17 22:39) 

柴壱

♪kojirouさま♪
ご訪問、そしてnice! ありがとうございます~☆
by 柴壱 (2008-02-17 22:40) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。